かなしみ。

観た映画についての短文まとめ

ファルコン・レイク(シャルロット・ルボン監督、2022年)

(Falcon Lake, 2022)

スタンダードサイズの画角。暗い池に浮かんだ死体のような少女の影から始まる。もうすぐ14歳になる少年セバスティアン(ジョセフ・エンゲル)は今年も夏休みにケベックのファルコン・レイク湖畔に家族でやってきた。そこでセバスティアンは母の友人の娘であり、幼馴染でもある16歳のクロエ(サラ・モンプティット)と再会する。クロエに連れられ他の少年たちと交流したりするうち、奇矯な行動を取るクロエにどことなく惹かれていく。クロエは、外からは見えない何かを抱えているようで、それが絶妙に幼いセバスティアンにはわからない。クロエはファルコン・レイクには幽霊のうわさがあるという。そして、自分たちでもシーツをかぶって幽霊に扮し始める。幽霊、死、セックス、痛み。思春期のそうしたゆらぎやすい感情が暗闇へと呑まれていくさまを本作は切り取っていく(自転車に乗ったふたりが時間差で闇に鎖された橋の奥へと走っていくシーンは印象的)。あえて画面を狭くして主人公の少年の顔に寄り添っていく画作りは今年だとルーカス・ドン監督の『CLOSE』を想起させて、実際さまざまな部分でよく似ている。そう考えると、水場という舞台を含めて数珠繫ぎとなった思春期モチーフに安直さというかひねりのなさを感じなくもないが、そこを怠惰に感じさせないだけの力強さを湛えた作品ではある。ちなみに翻訳当時(2019年)に出た原作も好きだったのだけれど、セックスセックス死セックスみたいな構成だった原作が映画ではタナトスタナトス幽霊セックスタナトスタナトスタナトス幽霊セックスタナトスタナトス!!!死!!!タナトスみたいなノリになっていて、最初は未成年の性愛を実写映画へ移植する際の配慮かとおもったらどうも監督の好みでそうなっているっぽい。性愛と死をアンニュイなうすくらがりでつなげるニュアンスはジャンルは違えどデイヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の『イット・フォローズ』を強く意識させた。まあ『アメリカン・スリープオーバー』でもいいのかもしれないけれど。